木彫り彫刻とは?自然の美と温かさを表現する芸術の魅力を解説!
木彫り彫刻とは、さまざまな木材を素材とし、飾りもの、板木への彫りなどを行う彫刻の技術です。またの名を「木彫」と呼ばれ、日本では古代から寺院や仏像、祭具などに使われてきました。そして仏教と一緒に進化し、近代に入っては家の欄間や洋風建築の装飾にも広がっています。今回はそんな木彫り彫刻の魅力について解説します。
木彫り彫刻の歴史と木材の特性を生かした表現の多様性
木彫り彫刻は、素材や道具、技術の使い方、制作物などによって異なるスタイルやアプローチが存在します。木に模様を刻み込む木彫作品、木から形を作り出す木製彫塑の2種類があります。用途別で木材は異なってきますが、日本で仏教の伝来とともに木彫りの発展に大きく関与した仏像を例にとると、飛鳥時代にはクスノキ、あるいはアカマツなどが使われており、平安時代になるとヒノキが用いられることになりました。
伎楽や能楽の面は軽さを必要とするためキリがよく使われています。鎌倉時代になると、武士の気風を反映した勇壮な彫刻が好まれるようになりますが、室町時代は仏像を必要としない禅宗が全盛期をむかえたため、仏像彫刻よりは社殿や寺院の柱や欄間を彩る建築彫刻が盛んになっていきます。
もともと大工が手掛けていた建築彫刻ですが、江戸時代になると装飾を専業とする彫師も登場するようになりました。明治に入り西洋建築が現れると、仏具や社寺の装飾に携わっていた職人や彫師たちも西洋彫刻を手がけるようになりました。第二次世界大戦の後には物資不足や男手を喪ったことにより、女性が実用と趣味で木彫りをはじめるようになり、近年では手芸のひとつとして各地に教室が設けられています。
そして木材は、美しい木肌をもった刃物の通りやすいものが好まれます。初心者に向いているのはヒノキ、クス、ヒメコマツ、カツラ、ホオ、シナなどになり、同じ種類の木でも材質や大きさはさまざまなので、使う用途に応じて選択するのが重要になってくるのです。
木彫り彫刻の技法と緻密な彫刻作業の美しさ
木彫にはさまざまな技法がありますが、「一木造」「寄木造」が主なものになります。日本では良い木材が採れることと、それらの木の加工性のよさが仏像に適しているため、木彫り彫刻は仏像とともに発達していったともいわれています。
技法:一木造
一本の木材から丸彫りした継ぎ目のない像を彫り出すのが「一木造」です。平安初期以前はほとんどがこの方法です。奈良時代末期から平安時代初期の仏像に多くみられます。一本の木に魂を封ずるという日本的な思想のもと、さまざまな人により作られています。
技法:寄木造
木の彫刻の主要部分を複数の材木からつくる技法やその構造のことを指します。一木造に対する術語でもあり、木のサイズにとらわれないため、大型作品の制作によく使われる技法でもあります。平安時代後期からはだいたいこの方法がとられるようになりました。
緻密な彫刻作業の美しさ
木彫の魅力は、その繊細さと独自の表現力にあります。木材の彫刻には刃物だけではなく、のこぎりやのみ、げんのう、小刀や彫刻刀などさまざまな道具が用いられています。仏像の彫り師は小刀とノミを使いますが、大工の技をルーツにもつ木彫りの職人たちは小刀を用いません。
そしてノミの切り口によって木がもつ本来のよさを引き出していくのです。そして堅牢な木材を利用した彫刻であれば、鼻筋の通った龍や、まなざしや口元まで注意を払って彫られた人物像、立体的に手前へ飛び出す鳥などの細密な表現が100年も200年も残り、見る人が感嘆せざるをえない風合いや質感、荘厳さなどを宿していくのです。
木彫り彫刻の温かな風合いと豊かな表情による心の触れる魅力
木に対する愛着の深さや感受性は、古くから日本人にはなじみ深いものです。
木彫り彫刻の魅力は、日本人にはとてもなじみ深くもある、そのあたたかな風合いと豊かな表情にあります。自然素材でもある木は質感や色合いにそれぞれ個性があり、木材の年輪や木目、制作者の技術、彫りこみによる豊かな表情や感情の表現により、木にあたたかい息吹が宿り、作品がいきいきとした存在感を放つようになります。
有史以来、日本人の生活の大部分は木によって成り立っているともいえるのです。木彫り彫刻の魅力とは、そのあたたかい風合いや豊かな表情が心に触れたときに深い共感や感動を与えてくれるところにあります。
まとめ
日本では仏教とともに一木造や寄木造などといった技法も発展し、後には家屋の装飾などにも使われてきた木彫ですが、素材や道具によってさまざまなスタイルやアプローチがあります。木彫り彫刻の魅力のひとつに、やわらかく加工がしやすいため、他の彫刻に比べると初心者向けでもあります。
手練れの彫師や職人の手によってさまざまな木材や技法を生かし、さまざまな作品を彫り上げることが可能です。手彫りの彫刻にはあたたかい風合いと豊かな表情があり、感情表現で木に息吹を吹き込めるのです。木と対話しながら彫り上げたり鑑賞したりすることで、見る人、つくる人の心に深い感銘を残すのが木彫り彫刻なのです。